メランコリーな妄想

手入れの行き届いた庭がありました。

ある日、スズメがやって来ました。
主人はいくらかの米粒をあげました。

またある日、ネコがやってきました。
主人はネコを少し撫でたあと、新鮮なミルクをあげました。

ハトが来れば豆をあげ、
ウサギが来れば、取れたてのニンジンをあげました。


天気の良いある日、庭にヘビがやってきました。
主人は驚き、側にあった大きな石を投げつけました。

それは見事ヘビの頭に命中し、
目玉や歯や脳髄や、美しい形をした頭、すべてが押し潰されました。


ヘビは主人を恨みました。
他の動物には見せもしなかった酷い仕打ちに絶望しました。

そうしてヘビは、主人の幼く愛らしい娘に呪いをかけました。


娘は足の悪い子供に育ちました。
いつもその足をずるずると引きずって歩き、走ることはできませんでした。

娘はヘビやトカゲを可愛がる子供に育ちました。
ウサギや鳥を可愛がる子供たちから、仲間はずれにされました。

学校から泣いて帰ってくる娘を見て、主人は初めて自分の過ちに気が付きました。


手入れの行き届いた庭がありました。

ある日、ヘビがやってきました。
主人はヘビが通りやすいよう、大きな石をどかしてあげました。

ヘビは石のあったところにとぐろを巻き、昼寝を始めました。


主人が家に向かって声をかけると、娘が嬉しそうに走ってきました。

驚いている主人と、もっと驚いている娘と、
その後ろでヘビだけが幸せそうに寝息を立てていました。